情報提供ガイドラインがオンコロジーMRをオワコン化する!

MRの仕事
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でんでん
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こんにちは!『会社に縛られない生き方へ!MRのブログ』管理者のでんでんです。

2019年4月に施行された医療用医薬品の販売情報提供ガイドライン(以下、情報提供ガイドライン)でMRの活動は大きく変化しました。本質的には何も変化してないはずですが、大きな変化を感じる部分は会社が行うMRの管理体制、報告体制です。ガイドラインに準拠した情報提供がなされているかを管理及び監視する報告体制に変化しました。

MRであればその背景は不適切なプロモーションをなくすことであると認識しているでしょう。その他にもコストも影響しています。この提供ガイドラインは全MRに影響を与えますが、プライマリーMRよりもオンコロジーMRへの影響が大きいのは間違いありませんので、その理由を述べます。

医療用医薬品の販売情報提供ガイドラインの背景

不適切な情報提供が情報提供ガイドライン策定の背景にあることはご存知でしょう。ディオバン事件に端を発し、CASE-J事件、イグザレルト事件など、不適切な広告プロモーション活動が明るみになりました。これを契機として業界の情報提供の在り方に国がメスを入れました。

人命に関わる医薬品に関することですので、正確な情報提供を歪める行為は許されるべきではなく、国が動くには納得がいくところです。もう一つ重要なファクターがあります。それが”コスト”です。医薬品のコスト構造を紐解くことで理解できます。

2017年10月の財政新財政度分科会で、医薬品のコスト構造について指摘されています。指摘のポイントはと販管費が51.9%と他業界と比較して高い点です。販管費の中でも宣伝費・営業費用が64.8%と大半を占めており、医薬品業界は相当のコストをかけ営業活動を実施していることが数字上明らかになっています。

医薬品は社会保障費と密接な関係がある産業であり、医療用医薬品の価格である薬価は公定価格です。医薬品の収益は税金をベースにした社会保障費から賄われており、社会保障費の逼迫が叫ばれている昨今、宣伝・営業費用に多額のコストをかけ、不要な競争をしていることを問題視されました。

サイエンスに基づかない不要な競争がデータ改ざんや不適切な情報提供にも繋がったことを受け、国の情報提供ガイドライン作成に大きな一因として影響しました。

情報提供ガイドラインにはオンコロジーMRは注意が必要

情報提供ガイドラインはプライマリーMRよりもオンコロジーMRが注意が必要です。コンプライアンス違反はオンコロジーMRよりもプライマリーMRに事例が多いです。しかし、情報提供ガイドラインはオンコロジーMRがより注意が必要です。理由はいくつかあります。

未承認情報

プライマリーMRとオンコロジーMRの両方を経験者は共感頂けると思います。オンコロジー領域で診療されている医師は未承認情報を普通にご存知です。国内外の学会、論文で勉強されているので、承認されたときにはやっと承認されたか!といった感じです。オンコロジーのMRも毎日更新された論文情報をチェックしているので、承認情報と未承認情報のボーダーを強く意識しなければなりません。医師もMRも当たり前に知っている既発表論文のエビデンス情報であるが故に口から未承認情報について発言してしまう可能性があります。情報は形と壁がないので、医師との会話中に承認情報の外に医師の会話が出ていくことがあります。それに一緒に乗っていくとプロモーションでなくともガイドラインに抵触する行為になります。

プライマリー領域では医師が自ら自社医薬品関連の未承認情報のデータを雄弁に語る姿を目にすることは多くありませんでした。オンコロジーの医師はその点が異なりますので、注意が必要です。

プロモーション資料情報以外のニーズと重要性

前述の通りオンコロジーの医師は学会での情報収集、論文での勉強をしたうえでMRへ質問をしてきます。MRがプロモーションに使用しているRCTや適正資料ガイドは当然目を通した上で更なる資料を要望されます。医師がMRに問い合わせする背景には多くの場合StageⅣのがん患者がいます。治療が効かなければ余命が短くなる、治療行ったらAEが発現したためにケースレポートやレポートされていない情報を求められます。ときには私見を求められることもあります。論文に書かれている以外の文字では見えない部分に情報の必要とニーズ、そしてそれが重要なときにMRへ連絡がきます。その要望にストレートかつ真摯に応えたいところですが、少し深呼吸をして対応しなければクビが飛ぶ事になります。

講演会、セミナーが実施する際にも使用するスライドの事前提出を企業は医師に求めます。そこで未承認の情報や論文未発表の情報、先生の考え方による他剤との違い、他社医薬品のデータなど医療現場の医師が重要と感じる内容を組み入れたスライドはマスキングをMRは依頼しなければなりません。そのまま講演頂くと違反となりますので、なかなか精神的に骨が折れる業務と感じているオンコロジーMRは多いことでしょう。

医師からのプレッシャー

プライマリーMR時代と異なる医師からのプレッシャーがあります。

オンコロジーMRが医師から受けるプレッシャーは

なぜある情報を提供できないのか?

というプレッシャーです。

学会で発表されていた情報を詳しく知りたいと医師から至極当然な依頼がMRに頻繁に来ます。すべての医師の要望にMSL等本社対応部門が迅速に対応してくれればよいですが、必ず迅速な対応して頂けるとも限りません。問い合わせの情報をMRが熟知しているケースも多々あります。質問に対してMRがその場で回答するのもNG。すると医師の中には知っているのになぜ教えないのかとプレッシャーを掛けられる方もいます。医師がそう思うのは当然ですが、その圧に負けてMRが応えてしまうとクビです。

セミナーがMRの説明会になった

情報提供ガイドラインが施行されてからセミナーで講演されるKOLの講演内容がMRの説明会内容と変わらないとの意見を耳にします。全ての内容がそうではありませんが、過去の治療と現在の治療の比較や今後の展望も一部NGになります。審査部門を確実に通すためにはMRが行う説明会スライドと同じものを使用して講演を行うことになります。講演を依頼してきて提出したスライドにケチを付けれたら誰しも気分のいいものではありません。医師がMRを叱責する姿が目に見えます。医師の伝えたいという熱い想いやモチベーションを削ぐ結果になり、医療のレベルの格差を加速化させるのではないかとさえ思います。

今、オワコン化するオンコロジーMR

情報提供ガイドラインを遵守し、適正な情報提供を行うことはMRとして、特に命に距離が近い疾患を扱うオンコロジーMRには非常に重要です。その一方で、医療現場から求められる情報をオンコロジーMRからアクティブに提供したり、医師が今後直面する壁を乗り越えるための情報を事前に提供することが難しくなりました。医師から依頼や要望を頂いて医師に役立つ情報が提供でき、情報提供もMSLや開発部門など他の部署から行わない案件の方が多くなりつつあります。

MR(medical representative)の略、医薬”情報”担当者です。担当できない情報が多くなり過ぎてその存在価値に疑問です(元々と扱えない情報は大きくは変化していませんが・・・)。

この環境ではオンコロジーMRがオワコン化した言っても過言ではなくなりつつあります。MSLや本社専門部門への取次ぎ、PMSの契約回収業務がオンコロジーMRの仕事になりつつあります。

オンコロジーMRについて述べましたが、プライマリーMRも同様です。

しかし、プライマリー領域の医師は診療分野が多岐に渡ります。自ら全ての学会や論文をチェックすることは困難です。そうは言っても専門領域の情報は収集されています。逆に専門以外の疾患に関するプライマリーMRの情報提供は製品情報概要をベースにしたアクティブな情報提供でも医師の診療に役立つのでしょう。

オンコロジー領域での情報提供を続けるにはMSLに転化すべきですね。

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